お客様と話していると、この一言を本当によく聞きます。
若い頃、ブームの時にやっていた。懐かしいね、と。
そして実際にご一緒に撞いてみると——ほとんどの方が、ビリヤードのノウハウをまったく知らないまま撞いておられます。
これは失礼な意味ではまったくありません。むしろ逆です。
知らないまま、あれだけ楽しんで、何十年も「やってた」と言えるほど記憶に残っている。だとしたら、知ったらどれだけ面白いんだろう、といつも思うんです。
『ハスラー2』が日本で公開されたのは1987年。ポール・ニューマンとトム・クルーズが撞く姿を観て、その帰り道にビリヤード場へ寄った人は、相当な数いたはずです。そしてその多くが、同じところでつまずいて、同じように離れていきました。
あの頃の球屋は、とにかく人がいました。
夜になれば全台埋まっていて、名前を書いて順番待ち。階段や壁際に座って、他人の試合をぼんやり眺めながら自分の番を待つ。ようやく回ってきた台で、見よう見まねでキューを構える。
そして——たいてい、思ったように入らない。
隣の台では常連らしき人がスパンスパンと入れていく。教わりたいけれど、聞ける雰囲気でもない。だから自己流で撞いて、たまに入って嬉しくて、でもだいたい外して、なんとなく「自分はセンスがないのかな」と思いながら帰る。
そういう夜を何度か重ねて、いつのまにか行かなくなった。
この記事は、そういう終わり方をした人に向けて書いています。
ちなみに私自身がキューを握ったのは20歳のとき、ブームが落ち着いたあとでした。
▶ 私がビリヤードを始めたきっかけ ― 20歳の出会いから公式戦に出まくるまで
「やりきれなかった」のは、あなたのセンスの問題じゃない

当時ビリヤードを続けられなかった理由を、多くの人が「自分に向いてなかったから」と記憶しています。
でも、少し考えてみてください。
これだけ多くの人が、そろって同じところでつまずいて、そろって同じように辞めている。
それが全員の資質の問題だとしたら、あまりに出来すぎです。個人の才能の話ではなく、当時の環境に共通の欠陥があったと考えるほうが自然でしょう。
実際、理由はとても単純です。
教わる場所が、なかった。
あの頃のビリヤードは、爆発的に流行った一方で、初心者に基礎を教える仕組みがほとんどありませんでした。スクールなんて言葉も一般的じゃない。上達法は「常連さんに気に入られて、教えてもらう」か「見て盗む」の二択。人見知りだったり、たまにしか行けなかったりすれば、その入口には立てません。
しかもビリヤードは、自己流だと間違ったフォームがそのまま固まるスポーツです。手球の中心を撞けていない、肘が横に流れている、狙う前に上体が起きている——こういうズレは、自分では絶対に気づけません。鏡もないし、誰も指摘してくれない。
だから、撞けば撞くほど「入らないクセ」が上手になっていく。
当時のあなたは、努力が足りなかったんじゃなくて、正しい入口を知らないまま独学させられていただけです。
「知らないまま撞いていた」のは、こういうことです
ご一緒に撞かせていただくと、昔やっていた方が知らないまま来ていることは、だいたい決まっています。
いくつご存じか、数えてみてください。
- 手球のどこを撞くかで、当たったあとの手球の動きが変わること(撞点)
▶ 【ダシの基本!】スピンを使って手球をコントロールする方法 - 撞点を上下に変えるだけで、手球を止める・引く・押すが撃ち分けられること
▶ ビリヤード引き球(ドロー)のコツ|できない原因と練習方法 - 狙いは構えてから合わせるのではなく、立つ位置を決めた時点でほぼ決まっていること
▶ 【狙い方の基本!】イメージボール・厚みを覚えよう - まっすぐ撞いているつもりで、まっすぐ撞けていないこと
▶ 【まずはまっすぐストローク!】ストレートショットをマスターしよう - 「的球を入れる」の次に「手球を次の球の前に置く」という目的があること(ポジション)
▶ 【作戦を練ろう!】ビリヤードが安定する人の共通点は“ポジションの考え方”にある - 直接入らない配置でも、クッションやコンビで取れる道があること
▶ コンビ・キャノン・バンクショットの考え方 - 入れることより、確実に入る球を選び続けるほうが勝つこと
▶ 【イレ続ければ勝てる!】イレを安定させる練習法
いかがでしょうか。
3つ以上「知らなかった」があれば、それが答えです。下手だったのではなく、ルールブックを渡されないまま試合に出ていただけです。
そして大事なのはここから。これらは全部、才能ではなく知識です。教われば、その日のうちに使えます。上のリンク先で、どれも詳しく解説しています。
どの順番で身につけるのがいいかは、こちらにまとめました。
▶ 【保存版】ビリヤードが上達するためのスキル習得順!初心者が最短で上手くなるステップとは?
何より、わかると圧倒的に面白い

基礎を学ぶ、と言うと「地味な練習を我慢する」イメージを持たれるかもしれません。
まったく違います。
ビリヤードがいちばん面白くなる瞬間は、思った通りに手球が動いた時です。
「ここを撞けば、こう戻ってくる」と考えて撞いて、本当にその場所で手球が止まる。この瞬間の気持ちよさは、たまたま的球が入った時の比ではありません。
昔やっていた頃のビリヤードは、たぶん「入るか、外れるか」のゲームだったと思います。
基礎を知ってからのビリヤードは、「次の球をどこから撞くか、自分で設計するゲーム」に変わります。同じ道具、同じ台で、まったく別の競技になります。
一度この面白さを知ると、外した球すら面白くなります。なぜ外れたかが自分でわかるからです。
30年経って、球屋は静かになりました

ここからが本題です。
ブームは去りました。全国のビリヤード場はずいぶん減りました。それは業界としては寂しい話ですが、もう一度やりたい人にとっては、これ以上ないコンディションでもあります。
- 台が空くのを待たなくていい
- 隣の台の視線を気にしなくていい
- 誰にも見られずに、下手なところから始められる
- 台のコンディションも、キューも、道具の質は当時より上がっている
あの頃「順番が回ってこない」「人前で外すのが恥ずかしい」で諦めた条件は、今ほぼ全部なくなっています。
皮肉な話ですが、ビリヤードを始めるのに一番いい時期は、実は今なんです。
50代から始めて伸びるのは、若い頃より本当です
「今から始めても、若い頃みたいには動けないし」と思われるかもしれません。
でもビリヤードは、走らないし跳ばないし、相手とぶつかりません。必要なのは、止まった球を、決めた通りに撞く再現性だけです。
そしてこの再現性は、体力より圧倒的に「理解」で決まります。
- どこを狙えば、球はどこへ行くのか(幾何)
- どこを撞けば、手球はどう転がるのか(回転)
- 次の球のために、手球をどこへ置くのか(配置の設計)
これは若さより、落ち着いて考えられる人のほうが有利な領域です。実際、50代・60代から始めて、20代の頃より確実にうまくなっている方をたくさん見てきました。
当スクールの実際のレッスンレポートです。ご自身と近い年代の方を見ていただくのが、いちばん早いと思います。
- 【61歳女性がビリヤード挑戦】ボールを上手く撞きたい!レッスン初受講
- 【定期レッスン2回目】レーザー機器でまっすぐ打ちが劇的改善|61歳女性が的球ポケット初成功
- 【ビリヤードプロレッスン】60代ご夫婦が定期レッスンに入会されました
- 高齢者3名がビリヤード体験|セブンボール対決で2-7コンビショットが決まり大盛り上がり
若い頃の自分は、力任せに撞いて、入ったら嬉しい、外したら悔しい、それだけでした。今の自分は、なぜ入ったのか・なぜ外れたのかを考えられます。その差は、想像以上に大きい。
「今さら1から教わるのは恥ずかしい」について
これが一番多い声です。
でも考えてみてください。あの頃うまくならなかったのは、誰にも教わらなかったからでした。同じことをもう一度やる理由はありません。
そして正直なところ、30年ぶりの方に対して「ブランクがある」なんて誰も思いません。ビリヤードは道具を使うスポーツなので、正しい構え方を知った瞬間に球の当たりが変わります。1時間で「あ、そういうことか」となる方がほとんどです。
当時あなたに足りなかったのは、たった数個の情報だけだった、ということが、その日のうちにわかります。
同じような不安については、別の記事でも書いています。
もう一度、キューを握るなら
当スクールでは、ビリヤードを触ったことがない方はもちろん、「昔ビリヤードしてた」という方の体験レッスンを多くお受けしています。
やることはシンプルです。
- 構えとブリッジ(手の形)を作り直す
- 手球の芯を撞く感覚をつかむ — ここで「止まる」が出せるようになります
- 狙い方の基準を1つ覚える
これだけで、あの頃「入らなかった球」がふつうに入ります。
30年前に置いてきた宿題を、1回のレッスンで回収する感覚に近いかもしれません。
そして、しかめっ面で練習する時間にはしません。
知らなかったことを知って、その場で試して、思った通りに動いて笑う。 そのくり返しがいちばん上達するやり方だと思っています。
「いきなりレッスンはちょっと」という方は、まずスマホで狙い方だけ試してみてください。無料で公開しています。
▶ 【プロ監修!】スマホで「厚み」の練習ができる3Dアプリを作りました【無料公開】
道具から入りたい方はこちらもどうぞ。
▶ 初心者のマイキューの選び方|予算・重さ・おすすめブランドをプロが解説
「昔、ビリヤードしてた」——この言葉を、私はこれからも聞き続けると思います。
ただ、そのあとに続く言葉が「懐かしいなあ」ではなく「で、また始めたんですよ」に変わる方を、一人でも増やしたいと思っています。
あの映画を観て球屋に向かった夜のことを、まだ覚えているなら。
今度は、待ち時間なしで台に立てます。
お問い合わせ・ご予約は公式LINEから
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